読み切りデュエマ小説:頂四文字

 最も弱き者はひとり、強大な気配を察知し動き出した。
前哨の待つ丘に導を立て、師を呼び寄せる。
彼の小さく弱々しい体躯は、大いなる啓示を受け取る器としての代償であり、自身以上に師がその重要さに肖っている。
雨の上がる時。強大な意志の結晶、ただ勝利を求めて彷徨う亡霊。
師と従者の到着を認めると、啓示を以って指揮にあたるべく、本隊へと合流した。

 

 妖精はどこにだっている。闘志の塊たる彼の周囲もまた例外ではない。
歌う妖精の声を聴き、透明の妖精は舞い踊り、大地が肥沃な道を敷く。
勝利を求める声から生まれ、ただ勝利を得るために生き続ける。
妖精の助けで歩みは速く、歩を共にする傾倒者は知らずのうちに厄介ごとを請け負う。
彼は立ちふさがったつもりの烏合を気に留めることがなかった。
今までも、もちろん今日も。

 

 前哨を率いる精霊龍の号令と共に、第二、第三の兵団が靴音を運ぶ。
横並びで視界を埋め尽くしながら、靴音はひとつだけの統率で、
戦う前から戦意を削ぎ落としてきた。しかし今回ばかりは、
兵団を見るや雄叫びと共に速度を増す。
求める物は、獲物にあらず、勝利にあり。
意志の欠片が溢れることも厭わず、身に宿す剣を振りかざした。

 

 眼前での咆哮、圧倒する闘気。
いかに団結しようとも怯んでしまえば、個々の矮小をさらけ出す。
不定の刀身を持つ思念の剣は、やがてその身に刻まれた龍の姿を成し、
勝利のために振るわれる。

 

閃光。戦に屍は不要なり。
不敗。我、未だ敗北を知らず。
必勝。我が望みはただ勝利なり。
勝利を示す旗だけを、無人の荒野が伝えていた。